《短編》遠距離なぼくたちの甘い新年の迎えかた《改訂版》
 年明け最初に見る顔が麻里の寝起きの顔ってのも悪くない。ていうかそれって、かなりしあわせかも。

 完全な眠りに堕ちたのか背中の麻里が急に重くなった。その重力をしっかり受け止めながら、俺は夜空を見上げた。

 さっきまで明るい光を放っていた月は、もう半分ほど雲のうしろに身を隠していた。その最後の光に俺はあわてて願いをかけた。


『もし彼女が都会で道に迷ったら、その柔らかな光で彼女の足元を照らしてください。憧れだったこの靴に慣れなくて靴擦れとかできちゃったら、いちばんに俺のところに帰ってこれるように。』


 おぼろげな光が雲のうしろに消えて、俺が吐いた白い息がはっきり見えた。すこし悩んでさっきの願いを取り下げることにした。間に合わないかもしれないけど……。


『やっぱ今のなし! 麻里の眠りがなにものにも邪魔されませんように。』


 彼女のちいさな寝息を耳元に感じながらそんなことを思って、満たされた気持ちで俺は夜空のしたをゆっくりと歩いた。 




おわり。
< 5 / 5 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:10

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

わたしのキャラメル王子様

総文字数/92,440

恋愛(ラブコメ)156ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
入来沙羅 ~iriki sara~ 高2 ☆ 真面目でしっかり者だけど 恋には奥手で恥ずかしがり屋な臆病者。 × 佐野悠介 ~sano yuusuke~ 高2 ★ ちょっとおバカなふわふわ君 実は見た目も中身もハイスペック男子。 愛情表現はド直球。自由奔放な帰国子女。 ・ ・ ・ 幼なじみの悠君の すきすき攻撃が止まりません。 私だってほんとうは 悠君の可愛いカノジョになりたい! でも。素直になれなくて。 ・ ・ ・ 「沙羅、充電させて~」 (うしろからぎゅうぅ) 「……よそ見すんなって!」 (プンプンふくれちゃって) 「いい加減自分のキレイに気付いてよ」 (ため息まじりの優しい苦笑で) まさかの同居までスタート!? 優しくてちょっと強引な幼なじみに 息つく暇もないほど毎日ドキドキさせられてます! でも悠君は 何か、隠しているみたい ときどき、不安になるよ。 ねぇほんとうに 私のこと、すき? PV100万突破♪ 読者様700人突破 ランキング総合で、最高17位。 初めてです、びっくりです。 皆様ありがとうございます‼ よしかね様 アスナ*様 励みになる感想をありがとうございました!! 番外編、完結してます。 ご興味ありましたらどうぞ♪
きみが空を泳ぐいつかのその日まで

総文字数/106,563

恋愛(純愛)81ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
家族がぎこちなくなったのは 私のせい? だけどそんなものに いちいち心を痛めていたら 毎日を消化できない それでも自分の存在理由がわからなくて ときどき消えたくなってしまう衝動を 止められなかったんだ 入学した高校で隣の席になった男の子は 明るくて優しいクラスの人気者 関わることのない 対極の世界の人だと思ってた 駅のホームに飛び込みそうになった私を 助けてくれた女の人も ただの通りすがりのはずだった でもほんとうは 15年前のあの日から すべてが繋がっていた 私は恥ずかしいほど なんにも知らなかったんだ たとえ私たちが 痛みと痛みで繋がっていたとしても あなたは私の、生きるそのもの
翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?

総文字数/116,106

恋愛(ラブコメ)347ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
一生懸命だけが取り柄の 天然系ポンコツ女子 そのうえ超絶なる鈍感 平澤美緒~mio hirasawa~ 高2 × あり得ない等身の2次元級イケメン でも中学まではチャラ系の ちょっとクールな上から男子 宮辺翔~sho miyabe~ 高2 * 勉強も運動もできて かっこいい私の幼なじみは 特に取り柄のない自分にとって 唯一の自慢 でも彼は基本わたしに興味ナシ 常に子ども扱い 彼女はいらない主義っぽいし それなのに噂になるのは美少女ばかり でもそれでいい 昔みたいに近くにいられれば それだけでいいと思ってた 思ってたんだけど 『あのふたり、やっぱ付き合ってたんだね』 『宮辺君にカノジョがいたとか普通にショック』 そんな声を実際耳にしたら 心は驚くくらいぐらぐら揺れた ……………… 他の子に取られるなんて、やだよ。 初恋なのに 気づいたときには失恋でした。 なのに どうして? * 「帰るぞ。拒否権はなし」 (俺様だったり) 「……ケガしなかったか?」 (すごく過保護だったり) 「いいからもっとくっつけって。 絶対俺から離れるな」 (意味わかんなかったり……) 「……もうムリ、限界」 (突然抱きしめてくるし) 君が近くて遠すぎて。 何を考えてるのかわからない。 「ねぇ、どうしたら 幼なじみの向こう側にいけますか?」 鈍感×鈍感 の じれじれ胸キュン詰めてみました

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop