溺愛妖狐ひろいました
溺愛Level 5

☆敵意ある視線



あの日以来、尊は泣いてはいない。
ミコト・・・。
尊いと書いてミコト。



それを思い出したことで、なにかが変わるかと思ってたけどなにも変化はなくて。
ホッとしたような、なんだか複雑な感情。




「亜子~」



ゴロゴロと喉でもなっているんじゃないかと思う甘えは今でも健在で。
私にだけ見せる、無防備な姿。



「尊、いい加減離れて。仕事遅れちゃう」

「んー、あと少し・・・」




尊に甘えられると、つい許してしまう私の癖も、相変わらず健在だ。
尊の言う好きっていう言葉。

それに私がちゃんと応えていなくても、尊は何も言わないし、求めることもない。
その状況に私は甘えているのだと。





「尊」

「・・・はぁい」



名残惜しそうに私から離れた尊は、グイッと手を上にあげ伸びをする。
尊だって今日もアルバイトなんだから、準備をしないといけないのに。




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