ビルの恋
いつものように、7時30分に職場に着く。

まだ誰もおらず、広いフロアは静まり返っている。

PCの電源を入れる。

作業エリアに行って、コピー機とプリンターの用紙を補充する。

最後に、シュレッドした用紙を片付けようと、シュレッダー下部のドアを開けたとき、本条君が通りかかった。

出社したばかりで、カバンを持っている。

「それ、僕やりますよ」

カバンをフロアに置いて、細切れになった紙の詰まった袋を取り出してくれる。

「ここ、結ぶのに意外と力要りますし」

そう言いながら、ゴミ袋の恥を固く結ぶ。

がっしりした手だ。

本条君は入社2年目で頼りないところがあるが、よく見ると、背が高く、顔立ちも整っている。

世界三大コンサルのS&Wに入れるのは特別優秀な学生だけだし、本条君もイケメンエリートなのだ。

同世代の女子には、モテるに違いない。

「ありがと」

礼を言うと、

「いえ。いつもやってもらってすみません。夏堀さんの担当じゃないのに」

ぼさっとしているようでいて、きちんと気遣いだってできる。

「まあね。でも、私がやっておいた方がいいのよ。
作業途中で用紙補充したり、ゴミ袋交換するの、煩わしいでしょ」
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