ビルの恋
その日の午後、職場に戻ると、デスクにプレゼントが置いてあった。

10センチ四方の小さな白い箱に、赤いリボンがかかっている。

カードが添えられている。

開けると、サイモンからだ。

「ナオの履歴書を確認していたところ、明日が誕生日だと知った。
私はプレゼントを選ぶのが下手なので、ヨーコとショータが探してくれたよ。
30歳というのは、日本の女性には微妙な年齢のようだが、アニバーサリーイヤーだ。
ナオが素晴らしい良い誕生日を過ごすことを願う。
Happy Birthday、Simon, Yoko, and Shota」

全く予想もしておらず、そして鬼サイモンからの優しいメッセージに、涙腺が緩んだ。

いけない、職場で泣いては。

急いで涙を拭き、気持ちを落ち着ける。

姿勢を正して座り、丁寧にリボンをほどく。

箱を開けると、パールのピアスだ。

斎藤さんと本条君にお礼を言いたかったが、離席中だ。

サイモンのところに行こう。

私はカードとピアスを持つと、席を立った。


< 47 / 79 >

この作品をシェア

pagetop