ビルの恋
言われたとおりに座り、書類に目を通す。

外資系らしく日英併記だ。

雇用…契約書?

驚いてサイモンを見る。

サイモンがにっこり笑う。

「ナオの派遣契約は来月いっぱいで切れる。
このまま派遣社員として再契約してもいいが、ナオさえ良ければ、直接雇用、つまり正社員に切り替えるのはどうだろう?」

願ってもない話だ。

「決定権は私にあるが、チームみんなの推薦だ。
特に、ヨーコとショータからは評価が高い。
二人のフォローを良くやってくれてるね、
ありがとう」

厳しいサイモンから褒められると、緊張する。

斎藤さんと本条君が評価してくれたというのは、とても嬉しい。

こういう時、英語でスムーズに気持ちを伝えられたらいいのに。

「あの、Thank you!」

と言うのが精いっぱいだった。

「2枚目に、職務内容の詳細が書いてある。
基本的には今と変わらないが、英語力を上げて欲しい。
私と違って、日本語が流暢でないエグゼクティブもいるからね。
質問があれば、ヨーコに聞いて。
サインは来週中に頼む」

ピアスも嬉しいが、このオファーも嬉しい。
S&Wの正社員になれるなんて、夢のようだ。

席に戻ると斎藤さんと本条君がいたので、プレゼントと採用のお礼を伝える。
二人ともとても喜んでくれた。

それでもまだ気持ちの高揚が抑えきれず、伊坂君に手短にメールでこの出来事を伝えた。




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