明日も歌う あなたのために
第1章

325号室の君




「はぁあああ甘い物食べたい………」


私の、夜勤の時の口癖だ。





私、佐原 花菜(サワラ ハナ)は
看護師2年目の22歳。


県内でも有名なこの病院の循環器科の病棟看護師をしている。最近になってようやく仕事にも慣れてきたって感じだ。


それにしても今日は入院患者さんが心なしか少ないみたい。


──今日の夜勤はわりと苦痛じゃないな。



それでも相変わらず甘い物は欲する訳で。


「友香~、夜勤明けたらどっかケーキ食べに行かない?」


「やだよ、帰って寝るんだから」


同期の友人、友香にピシャリと誘いを断わられ、口を尖らせた。


───いーじゃん、私は明日オフなんだし……。


あからさまに不満を顔に浮かべた私に、友香に苦笑いをした。


「そんな顔しないの。それに明後日からは
花菜も担当増えるんでしょ?」


「うん、たしか転院の中学生」


「中2男子だってさ」


「一番嫌な時期じゃんそれ。俺は神だとか思ってる時期じゃん」


「厨二病ね」



そうそう、それ。苦手だなぁ……。


人を助ける仕事がしたくて看護師になったけれど、二年目になった今ではまだまだ "人を助けられている" ような実感が持てるほど大きなことは出来ていないような気がする。


ただなんとなく、過ぎていく日々。




そう、君に出会うまでは………。








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