愛を込めて極北
 見ないほうが身のためだとは、重々分かっているはずなのに。


 ついつい毎日毎晩、楠木の動向をチェックしてしまう。


 ジョアヘヴン滞在中、一日の予定を終えて部屋に戻ってパソコンに向かいながら、その日一日の報告書のようなものを書き上げ、日本の事務所までメール送信。


 それから撮影した画像をパソコンに取り込んで保存し、何枚かピックアップしてSNSにて公開。


 画像にはその都度説明文が付け加えられているのだけど、文章の端々から気分の高揚、ハイテンションな様子が伝わってくる。


 第二の故郷とまで公言する極北の地にようやく降り立ち、もう少しで念願の島内探索が開始される。


 キングウィリアム島を一人で巡り、写真を撮影したり、フランクリン隊の痕跡を探し求める旅。


 百何十年も前の遭難した隊の痕跡など今更……と懐疑的な人たちも少なくないけれど、実際未だに島内あちこちから遺物が発見され続けている。


 そして遭難事件の鍵を最も握っている、艦長フランクリンの墓を発見でもした日には……。


 フランクリンは船が放棄されるのに先立って、船内で死去したらしいのだけど、死因やどのようにして葬られたのかは謎のままだ。


 キングウィリアム島のどこかに埋葬されているという説もあるため、それを発見なんてことになったらニュースは全世界を駆け巡ることとなるだろう。
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