愛を込めて極北
春の気配
***


 「美花ちゃん、お客さん来たみたい。たぶん宅配業者だから、ちょっと出てもらえるかな」


 「はいっ」


 響さんはファックス送信で手が離せなかったため、私が宅配業者の応対をした。


 小さなボール箱に入ったものは、専門書。


 海外の業者に注文したものが届いたようだ。


 受け取りサインを済ませ、業者が帰ったのを確認してドアを閉じる。


 「便利な時代になったよね。昔は出版社にわざわざ連絡して注文しなきゃならなかったけど、今はネットで世界中どこからでも欲しいものを購入可能」


 梱包を解いてタイトルを確認すると、かのフランクリン探検隊に関する英文の専門書のようだ。


 「うわ」


 パラパラページをめくってみると、遠征の途中で病死した隊員数名の遺体、しかもカラー写真が目に入った。


 永久凍土に守られ、150年以上を経たにもかかわらず生々しい。


 夢に出てきそうで、食事前じゃなくてよかったと心から思った。
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