愛しの残念眼鏡王子
いつまでも専務を見下ろしているのは悪いと思い、しゃがみ込んだ。


「いや、次の約束まで時間があるから、少しのんびりしたいなーって思っていたら、こんな誘惑があったから我慢できなくて……。そうだ、香川さんこそどうしたの? こんなところで会うなんて、びっくりしたよ」

専務らしい考えに口元が緩んでしまう。


「私は社長におつかいを頼まれて、郵便局に行った帰りなんです」

「そうだったんだ、お疲れ様」

ふわりと笑う彼に胸が鳴ってしまう。


あぁ、いやだな。
こんなに近くに専務がいるんだから、胸を高鳴らせている場合じゃないのに。


最近の私は、ちょっぴりマズイ。


専務のことなんて、まったくなんとも思っていなかったのに、周囲にからかわれ始め、専務の優しさに触れ、こうやって毎回癒される笑顔を見せられてしまうと、ドキドキしてしまっている。

胸をときめかされてしまっているんだ。


なぜだろう。

最初は癒しだな、この笑顔くらいにしか思わなかったのに。

いつからこんなに眩しく見え始めてしまったのかな。
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