愛しの残念眼鏡王子
「あれ、声が聞こえないね。いつもは騒がしいのに」


専務の自宅が近づいてきたけれど、いつものように笑い声などが一切聞こえない。

いつもならみんなの楽しそうな声が響いているのに。

まだみんな集まっていないのかな?


不思議に思いながらも、松田さんに頼まれたお酒を持って専務の自宅に向かったんだけど……。

「あれ、専務だけですか?」


訪れると、バーベキューの準備はバッチリしてあるのに、庭先にみんなの姿はなく専務ひとりだけ。

「あ、うっ、うん……! みんなちょっと遅れて来るみたいで……」

「そうなんですか」

しかもなぜか専務の挙動がおかしい。


もしかしたらまたいつもの如く、みんなの気遣いなのかもしれない。

それかなにか企てられているとか?


一年以上一緒にいると、みんなが考えることが分かるようになってきた。

だからどうせそのうち、からかいながらひょっこり現れるに違いない。
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