3ヶ月だけのママ~友達が妊娠した17才の夏~

「千奈美。それ……ホントなの?」


 コソコソと額を寄せ合い、周囲に聞きこえないよう話す。


「うん、本当」

「千奈美はそれでいいの~?」

「……少し迷った。でも、正直どの面下げてって思ったし」


 千奈美は硬い顔でふるふると首を振ってから、イタズラっぽく笑った。


「だから、まあ、今度はいきなり付き合いはしないでお友達から始めましょって」

「なぁ~んだぁ」

「それは確かにいいかも」


 正直、私もまだ夏樹くんのことを完全には信用できない。
 本当に千奈美のことを大切にしてくれる?
 同じ轍は踏まない?

 もしかしたら、お友達からって言われたことで怒ってもう連絡してこなくなるかもしれないしさ。
 それなら、それでいい。


「で、朋絵の方はどうなってるの?」

「えっ?」


 千奈美が自分の話から、私のことに話を振ってくる。
 動揺して、体が熱くなった気がした。


「そうそう~、どうなったの? 凄い気になるー」

「えっと、それは……」


 耳まで熱を持ってる気がした。
 体がぽっぽしてくる。

 ――私は今、恋をしていた。

 志望校のオープンキャンパスで出会った男の人。
 彼が構内で迷っていたところを助けてあげたっていう、少女マンガとかとは真逆なシチュエーションで出会った。

 声をかけて振り返った彼と目が合って、全身が硬直した。
 こういう感じを、電撃が走ったっていうのかな?
 一目惚れって、本当にあるんだ。

 正直そんなにイケメンってわけじゃない。
 でも、立ち振る舞いとか、ファッションとか髪型とか、滲み出る内面を感じ取って人は一瞬で恋に落ちるんだと感じた。


「新幹線に乗って来てるって言ってたし、会ったりはしてないよ」

「でも、メルアド交換したんだよね?」

「う、うん……」


 人の恋バナを聞くのは好きだったけど、自分の恋バナをするのはダメだ。
 恥ずかしくて慣れなくって、苦手だ。


「メル友? メル友~?」

「たまに、メールするし、来たりもするけど……」


 本当に他愛もない内容のメール。

 受験生らしくオススメの参考書の話だったり、家族が買ってくる学業のお守りの置き場所に困るって話だったり。
 本当にしょうもない内容のメールしかやり取りしかしていない。

 向こうは、私になんか興味もないだろう。
 だから、仕方がないって思う。
 けど、私はもうちょっと気の効いたメールが送れないものかと、自分の女子力のなさに溜め息をつく。
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