イジワルな彼とネガティブ彼女
楓さんの体温を、肌で感じる。


少し前まで、私はこの感触を一生知らないままでいるんだろうと思っていた。


映画やドラマで見るベッドシーンしか知らない私は、お手本がそれしかなくて。


初めての時、楓さんは、


「莉子が感じるまま、そのままの声を聞かせて」


優しく優しく抱いてくれた。


恐怖心や羞恥心を取り去ってくれた楓さんの声と手に、私は癒されていったんだ。


「・・・莉子、気持ちいい?」


「・・・うん、すごく」


「俺も、すげー気持ちいい」


体の奥深くで、楓さんを感じる。


「かえで・・・さ、ん」



私は一生、楓さんだけを好きでいる。



楓さんに腕枕されたまま、気になっていたことを聞いてみた。


「ねえ、どうして展示会の時、私を無視したの?」


「あれは、合併のことがあったから、吸収する会社の莉子とつきあってるのがバレたら困るから」




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