1405号室の佐藤
真下の佐藤
―――うん、無理だ。

やっぱ無理だ。

ぜったい無理だ。

もう耐えられない。


死のう。

死んじゃおう。

死んで、きらきら光る夜空のお星さまになろう。


そう決心して、あたしはベランダの手すりによじ登り、腰かけた。


地上15階のマンションのベランダからは、ずいぶん遠くまで見渡せる。


びゅうっと吹き上げてくる、冬の夜の冷たい風。

都会の明るい夜空の下に、数え切れないほどの人工的な明かりが煌めいていた。


―――まあまあ綺麗じゃないの。


これが、あたしの人生の最後の瞬間。

あたしの目に映る最後の景色。


………うん、悪くない。


あたしは妙に清々しい気分で、ゆっくりと宙に身を乗り出した。


そのとき。



「おい、そこのアホ」


……………ん?

今、なんか、声がしたような………。


あたしは思わず、体勢を立て直し、手すりをぎゅっと握りしめた。

そして、きょろきょろと首を巡らせて、声の主を探す。


でも、あたしの視界に映るのは、大都会の明るすぎる夜景だけ。


「…………?」


じゃあ、いったい誰の声だろう。

もしかして、天国からあたしを迎えにきた天使?

もしくは死神か。


そんな馬鹿なことを考えていたら。


「おいクソバカ、下だ下」

「………はい?」


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