秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~

「……気づいていたのか。さすがはギュンター」

「お前はエリーゼ嬢とヴィリーの関係に気づいていた。おそらく、俺にバルテル公爵家からも縁談が来ているのも知っていたんだろう。公爵家とうちの伯爵家が縁戚関係になれば、当然、公爵の力は強まる。そもそも彼は国王の弟君だ。第一継承者のフェリクス様は病弱、第二継承者のお前はちゃらんぽらんときているところで、財力も胆力もある第三継承者の公爵を持ち上げる動きはないこともない。お前が動くくらいだから、表立った動きがあったのかもしれないな。その公爵の力を弱めたくて今回の仮面舞踏会を企画したんだろう」


表情を変えずに言い募るギュンターを、クラウスは満足げに見やる。


「はは。さすがは俺が認めた男だ。君のそういうところが好きだよ、ギュンター」

「褒め言葉はいらないよ」

「そうだね。俺はエリーゼのことはよく知っている。彼女が短絡的な行動に出るのはあくまで予測の範囲だ。君が、他に好きな男がいる女を無理やり娶るようなタイプではない、というのも含めて、君とエリーゼの縁談を破局させるために企画したことは認めるよ。俺は王の器ではない、しかし兄上は違う。病弱というだけで軽んじられるのは納得がいかないのだよ。少しは叔父様の鼻っ柱を折りたくて計画したことだ。巻き込んだのは認めるが、……まあ君にも収穫はあったろう」


クラウスは目線でコルネリアを指し示す。

ギュンターはその視線を遮るように彼女の前に立った。


「それの礼は言っただろ。とにかく、お前が王位第二継承者としてしっかりしていれば、バルテル公爵がでしゃばることにはならないんだから、いい加減身を固めてだな……」

「あー、父上や母上のようなお小言はいらないよ。俺は結婚が自分を幸せにするとは思えないんだよ。名画をめでているほうがよっぽどいい。何なら君たちが証明して見せたまえ。結婚とはすばらしいものだと。俺にそう思わせることができたなら考えるさ」


すべてを放棄するような態度で、両手をあげてクラウスは部屋を出て行った。
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