秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~

全身から緊張が伝わってくるその背中を見て、ギュンターは思わず笑ってしまう。


「隣、いいかな」


彼女が頷いたのを確認してから隣に腰をかけ、湿布のつけられた頬を上から撫でた。


「大丈夫?」

「はい。驚きました。公爵様が……。それに、父とも揉めていることがあっただなんて思わなくて」

「ただ目障りだというだけで、誘拐の罪まで擦り付けようというのはやりすぎです。同情する必要はない。他に怪我をしているところは本当にありませんか? そもそも、なぜあの部屋を出たのです。公爵の手のものにさらわれたのですか?」

「いいえ。部屋から出たところを後ろから誰かに。……気が付いたらあの小屋にいて後ろでに縛られていて……驚きましたわ。ギュンター様が来てくれなかったら」

「俺も肝を冷やしましたよ。安全のために一室に閉じ込めておいたのに、なぜ出てきたのですか」

「エリーゼが捕まっているのを見て。取り戻せないならせめて、身代わりになれないかと思いましたの」

「ああ本当にバカな人だ」


ギュンターは頭を振ってため息をついた後、彼女の肩をそっと引き寄せた。


「それで気が狂いそうになる男もいるということをわかってください。今日会ったばかりなのに、俺はもう君なしではいたくないと思うほど、恋に溺れている。そこであなたが捕まったとしたら、俺はあの場の全員を根絶やしにするところです」

「まあ」

「明日、屋敷に戻ってから正式な縁談の返事を送ります。俺との結婚を受け入れてくれますか?」


戸惑っていた右手が握られる。
甘さを含んだまなざしにコルネリアは胸がいっぱいだった。
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