秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~


「お嬢さん、自己紹介をお願いできるかな」

「あ、はい」


クラウスに言われて我に返り、高鳴る心臓に翻弄されながらも仮面を外す。

普通の仮面と違い、クラウスが特注させたという仮面は顔の上部をしっかりと覆い隠す。とった瞬間に視界が広がり、覆われていた部分に涼しい風を感じた。

そして、おどおどと自己紹介をする。


「コ、コルネリア=ベレと申します。エリーゼとは従姉妹にあたります」


言った瞬間に、ギュンターが目を見開くのが見えた。
失望されてしまったかと思えば、コルネリアは胸が詰まるような気がしてくる。


「……ベレ伯爵のご令嬢か」


納得するクラウスに、ギュンターが声を重ねた。


「その花飾り。……先ほど見てしまったのだが、バルテル家の紋章が入っているだろう。それは?」

「……今日、私とエリーゼは服を交換してこの会に臨んだのです」


コルネリアの言葉に、クラウスとギュンターは不思議そうに顔を見合わせる。


「それは何のために? 君たちは二人とも妙齢のご令嬢だ。むしろ競い合って飾り立てるのが普通だと思うが」

「それは……」


コルネリアはちらりとヴィリーを見る。目があうと彼は気まずそうに目をそらした。

ふたりが駆け落ちを決行する間、エリーゼが会場にいると思わせるための身代わりだ、と言いたいけれど、やはりふたりの関係をここでばらすのはまずいのだろうか。

彼から言い出してくれたなら本当のことを言おうかとも思うけれど、事情が分からないだけに決めかねていた。

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