空に星が輝く限り、私はきみを忘れない~Dearest~
「仁科って、家どっちなんだ?」


校門を出て、一ノ瀬くんが言った。


「私? 私はこっちだよ」


「何だ、同じじゃん。だったら乗ってけよ」


「え?」


そう言ってポンポンと自転車の後部サドルを叩く。


ちょっと迷ったけど、私は思い切ってそこに座った。


「じゃ、行くぞ」


「う、うん」


「ほら、もっとちゃんとつかまれって。落ちるぞ」


「え、でも」


「でもじゃねーの。落ちたらけっこう痛いぞ」


「う、うん」


ぎゅっと一ノ瀬くんの腰に腕を回す。


一ノ瀬くんからは、何だかいい匂いがした。


夏の夜空みたいな、さわやかで清々しい香り。


これ、好きだな。


そっか、これが一ノ瀬くんの匂いなんだ。


うん、すっごくぴったりだ。


何だか包まれているだけで落ち着いて、いつまでもこのままでいたくなってしまう。


これ、どっかで売ってるかな。


男物っぽいけど、何てやつだろう。


今度紗英と買い物に行ったらみてみよう。



そう、決めた。


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