この空の彼方にいるきみへ、永遠の恋を捧ぐ。



叶野 聖子(かのう せいこ)享年33歲。

しっかり者で強気な性格で、お父さんより男らしい人だった。

この生まれつき色素が薄く、ブラウンがかった長い天然パーマも母譲りだったりする。


そんなお母さんの死は、私達家族の絆をバラバラに砕いた。


「お父さん、朝ごはんここに置いていくからね……」


毎食、食事を作って家事をする。

お母さんの代わりに出来ることは何でも必死にやってきた。

だけど、お父さんが私を見ることは無い。


「……行ってきます」


返って来ない返事。

分かっていても毎日忘れずにそう言って、高校へ向かう。

突然大切な人がいなくなる悲しみを知っているからこそ、後悔しないように、毎日お父さんへの挨拶は欠かさない。


お母さんが亡くなった日も、私は眠っていて、仕事に出かけるお母さんに「行ってらっしゃい」を言えなかった。


それをずっと後悔していた私は、これだけは欠かさずにしている。


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