佐倉小花の幽愛白書
 
 30間近にして女性との交際経験無し、無趣味で根暗で髪型が地味で気持ちが悪いなどの周りからの嘲笑を聞いているうちに私は自覚したのだ。


自分は異性に好かれない人間なのだと。


だから考えもしなかったのだ、教え子の生徒に好かれる事なんて。


一体彼女は僕のどこに惹かれたのだろうか。


そんな疑問をぶつけてみると、夕陽で淡く照らされる理科準備室内に少しの間沈黙が訪れた。
佐倉小花にしては珍しく、返事の言葉に詰まっているようだ。


「それは、内緒です」


 彼女はそれだけ言うと私から視線を外し俯いてしまった。


これはもしかして照れているのだろうか。それにしたって声も平坦で顔も一切紅潮していないから解り辛い。


「……今日はこれで失礼します。お弁当箱は明日回収しますので」


「美味しかった。洗って返すよ」


「ありがとうございます。明日もまた作ってきますね」


「それはもう結構だ。私は生徒に糧を恵んでもらうほど貧乏では無いからね」


「糧ではなく私の愛を受け取ってください」


「尚更遠慮させてもらうとしよう」


 そう言うと彼女は返事も無く理科準備室を出て行った。


あれは恐らく明日も作ってくる気だろうなと私はビーカーに注がれたコーヒーを一口啜って深いため息を付く。
< 15 / 15 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

刑事と画家とお祖母ちゃんの銀銃

総文字数/73,559

ファンタジー18ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
街路樹の葉が美しく舞う時葉町で突如発生した人喰い殺人事件。 それが人の手による犯行では無いと気付いた刑事の神保聡介は非公式に同じ街に住む画家、蔵島翡翠に協力を依頼する。 人間の常識を超えた都市伝説的存在に立ち向かう2人にはある切り札があった。 それは翡翠の祖母が生前の体験を元に記した悪魔や霊、魔術などに関する大量の書物と一丁の銃。 それだけを頼りに何の特別な力も持たない神保と翡翠は人喰い女の前に対峙する。
教師と教え子

総文字数/3,331

ホラー・オカルト1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
私の奇妙な体験を告白しよう。それはどんよりとした曇りの日、私の事務所にある学校の教師とその教え子が訪ねて来たことから始まった。
禁断の恋

総文字数/4,734

恋愛(純愛)1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
これは禁断の恋だ。それでも私は君を愛してしまった。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop