佐倉小花の幽愛白書
 
 優秀な生徒に対してこんな感情を抱くのは教師失格かも知れないが出来る事ならば私は佐倉小花とは最低限のコミュニケーションだけで済ませ、なるべく長い時間彼女と一緒になりたくないと考えていた。


「何か御用かな?」


 出来るだけ平静を装いながら私は彼女に聞く。


すると、彼女は準備室の隅に畳んで置かれたパイプ椅子を一脚手に取り空いたスペースに広げて腰を掛けた。


出来るだけ長居してもらいたくなかったので敢えて椅子を出さなかったのだがどうやらそんな私の企みは無駄だったようだ。


「よろしければコーヒーを私にもいただけますか?」


「え?」


「先生に少し長いお話……いえ、ご相談がございますので喉を潤す物が欲しいのです」


 どうやら今日は厄日らしい。


ただでさえ苦手な相手と放課後の滅多に来客のない理科準備室に2人きりでこれから長い時間を共に過ごさねばならないのだから。
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