離婚前提策略婚。【改訂版】

龍成と龍一

昨日は華乃がいてくれて良かった。誰ともいたくないような誰かにいて欲しいような、何とも言えない気分だったから。あの時の俺に華乃の存在はありがたかった。


それでも考えはまとまらない。

考えるのすら嫌になって、でも気づくとまた同じことを考えている。


けれど無情にも時間は過ぎ、親父が出張から帰って来た。


「社長、お帰りなさいませ」


社長室で嫌みったらしく親父を迎える。


「ちゃんとやっているのか?」

「見りゃわかるだろ。この資料の山、どうにかしてくれよ」

「全部終わったら皆で食事にでも行きましょうか」


会社の入り口まで迎えに行った麻友ちゃんが、親父の後ろから顔を出す。


「これ全部って夜中になるんじゃ…」

「明日から関係者や取引先に挨拶まわりだ。休みはないと思え」


疲れているのかソファーにどっと座り込む親父。


──って挨拶まわり?どんだけだりぃんだよ。


「…社長、ご契約おめでとうございます」

「ふっ。何の契約かもわからんくせに」

「なんか大事な契約だろ?一ヶ月もかかってんだから」
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