repeat
第9話

10月28日(金)PM5:05。
 喫茶店『クラシカル』で真と彩花は向かい合っている。真にとっては二回目の来店になるが、彩花にとっては三回目の来店となる。
「結局、晶からの協力は受けられないと考えるしかないですね」
 予想通りリピートしたことに彩花は落胆している。
「しかし、今回の検証で男性への相談ならリピートしないということがほぼ確定できた。大きな前進さ」
「そうですね。いずれにせよ、真さんがいるから私は安心してます」
 ずっと一人で抱えてきた問題を一緒に共有できる人物が現れたというだけで、今の彩花には大きな支えとなっている。
「僕の力でどこまで解決に迫れるか分からないけど、全力は尽くすよ。ともかく、今日までに分かったことを軽くまとめるとしよう」


【リピートについて:追記1】
・10月27日、三回目の木曜日。彩花から真へリピートの相談を持ち掛けられる。
・10月28日、一回目の金曜日。相談を持ち掛けて初めてリピートしない状況になる。内容6を検証するために敢えて晶にリピートの相談をする。
・10月28日、二回目の金曜日。予想通り一回目の金曜日がリピートする。


【リピートの内容:追記2】
・上記の内容から、男性へリピートの相談をした場合のみ、リピートをしない可能性は大。逆に女性への相談は高確率でリピートする。

「まずはこんなとこか。何か書き漏れはあるかい?」
「特にないと思います」
「じゃあ、今日からリピート解決に向けた本格的な調査にあたるよ。まず、リピートの概要を読んですぐに怪しいと感じたのがリピート初日の前の日に行った墓参り。この墓参りについて詳しく聞きたい」
 メモ用紙とペンを片手に持ち、内容を書き記す準備は万端だ。
「お墓参りですか。私は結構ご先祖様とかを敬う方なのでお墓参りはよく行くんです」
「リピートの内容に書かれてあったけど、母方のご先祖さんに参ったんだよね? 普段と変わったことはなかった?」
「いえ、今まで通りと変わらず普通のお墓参りでした。連休だったので前日おばあちゃんの家に一泊して、翌日ゆっくりお墓参りをして地元に帰って来ました」
「なるほど」
 真はペンを置いて耳たぶをさすりながら考え込む。
(墓参りは重要な要素ではないのか? 墓参りによる先祖の何かしらの想いがリピートを生んでいるという仮説が有力だと思っていたんだが……)
「本当にお墓参り以外に事件、事故、変わったことはなかったのかい? 26日からリピートが始まっている以上、前日の25日以前に何かないとリピートの説明がつかない」
「25日以前ですか。お墓参りをした以外は特にこれと言ったことはなかったですね。強いて言えば、お墓の近くで弟が蜂に刺されたくらいです」
「蜂とリピートは確実に関係ないな。これでは解決の糸口すら掴めない。どうしたもんかな……」
 真は腕組みをして溜め息をつく。
「弟さん、いや、他のご家族の中でリピートに陥っている人はいないんだよね?」
「はい、リピートの概要に書いてあるように、私だけがリピートになっているようです」
「25日にご家族と別行動をとった記憶は?」
「多分、ありません。お墓参りは家族全員とでしたし、散歩も弟と二人でしたから」
「そうか、う~ん……」
 再び深い思考タイムに入る真をみて、彩花は一つの案を切り出す。
「あの、私から一つ提案があるんですが聞いてもらえますか?」
「もちろん。どんな提案?」
「明日、明後日と連休ですよね? 実際に私の実家に行ってみませんか? 現場を実際に見たら、真さんなら何かに気付けるかもしれませんし、私も忘れていることを思いだすかもしれません」
「なるほど、現場百遍とはよく言うし、手掛かりを見つけられるかもしれない。で、実家はどの辺にあるんだい?」
「隣県の池田町というところで、茶屋咲駅から乗り継いで二時間くらいのとこです。ただ実家までは、池田駅からバスで三十分かかりますけど」
「みかんの産地で有名な池田町か、ならそんなに遠くはないし実際に行くのも悪くない。後、宿泊施設や飲食店はある?」
「はい、駅前にある程度の施設は揃ってます」
「よし、じゃあ明日の朝一で小林さんの実家に行ってみよう。実家に行けば小林さん自身何かを思い出す可能性は十分あるし」
「そうですね」
「決まりだ。じゃ、早速列車の時間を調べてみよう」
 ポケットから携帯を取り出すとモバイル時刻表を開いて列車の時刻を検索する。
「あった。池田町方面の始発列車は六時台にあるな。じゃあ少し早いが六時半に茶屋咲駅で待ち合わせて向かうのはどう?」
「はい、問題ありません」
「OK、じゃあ明日はこの予定で行動しよう」
 真は携帯を閉じていつものモカを口にする。その様子に彩花は安心感を感じていた。



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