クールな御曹司にさらわれました
尊さんが真面目な顔で、私のことを抱き寄せてくる。
そうじゃない、そうじゃない!
これで不安だなんて言ったら、マリッジブルーの女子みたいじゃない!

私は冷静になろうって提案をしてるわけで……ええい、くっつかないでってば!

「尊さん、離してください」

「タマにどうすれば気持ちが伝わるか……真剣に考えている」

この御曹司様、ちょいちょい天然なところがある。私が悩んでいる現状も、イマイチ把握してくれていない。しかし、この人の優しさと真面目さには私だって誠意を持って返したい。

「尊さん、私、あなたのこと嫌ってるわけじゃありません」

抱き締められた格好で、呟くように言う。

「前よりずっと……尊さんのこと知りたいって思ってます」

「本当か?」

私は頷いて、おそるおそる尊さんの顔を見上げた。近くで見ると、際立って格好いいこの人。気おくれしてちゃ駄目。恋するなら対等でいなくちゃ。

「もう少し、待ってください」

私の言葉に応えず、尊さんが再び私の身体を抱き締めた。
額に落とされたのは、キス。
驚いたけど、きっとこの人なりに今できる精一杯の愛情表現をしてくれたのだと思う。

「タマ、楽しいデートをありがとう。今日は誰からも呼び出されないようにしている。デートのプランはここまでか?」

「いえ、次は市街地と神社を回ろうかなって」

「楽しみだ。今日はもう少しふたりきりだな」

私は尊さんに抱き締められたまま、おずおずと頷いた。
腕の中は暖かくて、居心地がよくて、どうしたらいいかわからなかった。




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