クールな御曹司にさらわれました
「離れている間に、せっかく縮まってきた距離が無になるのではと不安になったんだ。それならばと設定したんだが……」

「だから、私の気持ちが抜けてますって。どーして、そんなにマイペースで勝手なんですか!」

今度は私の番だ。これがこの先の私たちの関係を決める、一番大事な瞬間。
きちんと言いたいことを言ってしまおう。

「そもそも最初から人さらいですからね!脅して軟禁するし、嫁に出す計画までたてちゃうし!衣食住与えてれば、文句言わないだろうって考え方が、庶民を見下してます!」

「それは……すまん」

「意地悪で、冷たくて、嫌なヤツかと思いきや、手伝ってくれたり優しくしてくれたり。こっちを散々戸惑わせておいて、いきなり告白。父親の借金の話の後にあんな告白されたら、断りづらいじゃないですか!」

「それはまあ、そうだが。空気、読めてなかったか?」

「ないですよ!ちょいちょい天然なのやめてもらえます?」

私はうつむく。すうと息を吸い込み、ふうと吐く。

「好き……とか、絶対勘違いだと思ってました。見たことない珍獣だから、手元に置いておきたいのかなって」

「珍獣がほしいなら、別途手配する。タマがほしいって気持ちは勘違いじゃない」

「逃げてごめんなさい。追いかけさせてしまってごめんなさい。……でも、あんな形で婚約させられそうになって……あなたに裏切られたみたいで悲しかった……」

言葉をきり、再び深呼吸。

さあ!
勇気を出せ、真中妙!
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