JUN-AI 〜身がわりラバーズ〜
「憧子さんっ!」

マンション下の駐車場に着くと。
降りようとした私の腕を掴んで、引き止める響。


「っっ……」

ここまでの数時間、なんとか気持ちを落ち着かせはしたものの…
突然の行動に言葉を詰まらせると。


「っっ…

ごめんっ……」

その人が辛そうに顔を歪めて項垂れる。



「っ…

なんで響が、謝るの?」


「っ、なんでって……」

今度はその人が言葉を詰まらせる。


それはそうだろう…
自分に落ち度はないんだから、弁解のしようがない。



「響は何も悪くない。

それより、大丈夫?」


「…っ、えっ?」


「…

ちひろさんの事、辛かったんじゃない…?」


途端その人は、目を大きくして…
すぐに、たまらなそうに唇を噛んで俯いた。

腕を掴むその手には、ぎゅっと力がこめられる。



「俺はっ、大丈夫…

けど憧子さんに、申し訳なくてっ…」
< 199 / 321 >

この作品をシェア

pagetop