ifの奇跡
しばらくの間、窓の外をぼうっと眺めながら昔を思い出していた。

我に帰ると、過去を振り切るように軽く頭を振った。

悲しい記憶を心の奥に仕舞い込み、もう一度日常の中に自分を戻した。


朝の情報番組を見ながら、一人で朝食を食べ部屋の掃除も済ませてしまう。

午前中には全ての家事もやり終えて、後はこれといってやる事がない。


なんの変化もないこんな毎日をこの先、一生続けていくのかと…ふと考える瞬間がある。


結局は全て自分の意思で選んだ結果が現在(いま)に繋がっているのだと分かってはいても、時々無性にやり切れなくなる時がある。

なぜ今私はここにいてこんな生活をしているのだろうと虚しくて寂してて堪らない気持ちに押しつぶされてしまいそうになる時があるのだ。


だけど、どんなに後悔しても過去をやり直すことは出来ない。

このまま、ただ時間だけが流れて私も同じように年を重ねていくだけ。


周りに何もないこんな田舎では夜にもなると静かで外の音がよく聞こえる。

だから、彼が毎日乗って帰ってくるバスの音が聞こえると帰ってきたのが直ぐに分かる。

今日も一日の締めくくりの儀式が訪れる時間。

儀式といっても特別な何かがあるわけではない。

そこにあるのは普通の家庭の普通の日常の一コマに過ぎない。

だけど一つだけ違うのは、そこにあるべき家族の話し声がしない事。

社宅の階段を上がってくる音が間近に聞こえると


“ピンポーン”


といつもの様にドアベルが鳴った。
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