不思議な眼鏡くん
「欲張ってもいいのに」
咲は響の背中に手を回す。「だって、わたし」

「俺のこと、好きだよね」
響が言う。「知ってる」

咲はとにかく恥ずかしくて、布団の中に顔を埋めた。

「顔見せて」
「やだ、恥ずかしい」
「なんだよ、あんなに乱れてたくせに」

ガバッと布団から顔を出す。「言わないで!」

響は咲の腕を押さえて、体重をかける。
「つかまえた」

唇の端にキスをした。何度も何度も、唇以外の場所に、キスをする。

咲は思い余って、響の目を見つめた。

「……してほしい?」
響が少し意地悪く尋ねた。

「ん……」
咲は恥ずかしくて、それ以上は言えない。

「キスしてってお願いしてくれないと、できないな」
「いじわる」
「お願いしてくれたら、すぐにするよ。だって俺、したいもん」

咲は唇を噛む。それから少し唇を開いた。

「して」

響が「ちっちゃいよ、声」と言う。

「して、キス」

響が勝ち誇った顔をした。
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