不思議な眼鏡くん
「おはようございます」
響の声がして、咲は顔をあげた。

「わあ、田中くん、イメチェンだね」
ちづが言った。

「鈴木さん、おはようございます」
メガネをかけていない響が言った。

髪はちゃんとセットされていて、あの地味で冴えない雰囲気を一掃していた。

「もうメガネはかけないの?」
ちづが尋ねる。

「今更なんで」
でも声は相変わらず無感情。素っ気ない返事をして、席に座った。

ついさっきまで、一緒にいた。低くて少しかすれた声が、今も耳に残る。

頬が染まる気がしたが、平静を心がけた。心の中で、念仏のように「落ち着け」と唱える。

「鈴木さん、おつかれですか?」
突然、響が尋ねた。

「いえ。別に」
咲は睨みたいのを、必死にこらえた。響は絶対に面白がっている。

「眠そうだから」
「眠くはないです」
「目が半分になってますよ」
「……ほんと?」

そこでちづが「普通ですよー」と笑った。

「どうぞ、これ」
響が栄養ドリンクを机に置く。「ききます」

「……ありがとう」
咲は軽く睨みながら、そのドリンクを受け取った。
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