不思議な眼鏡くん

携帯のアラームの音で目が覚めた。
真っ暗な中を見回すと、細く縦に太陽の明かりが見えた。

ないと思っていた窓には、雨戸のような板が貼ってあったらしい。

「ん……朝?」
隣がもぞっと動く。

隣……これ、田中くん、なんだ。

咲はとっさにベッドから飛び降りた。はだけそうになっていたガウンの前を慌てて閉じる。

ど、どうしよう。わたし、なんてことをしちゃったんだ。

「鈴木さん?」
響がベッドから上半身を起こした。暗闇の中、シルエットだけが浮かぶ。

頭をもしゃもしゃとかいて、それから枕元の照明に手を伸ばそうとする。

「明かりは点けないでっ」
咲は思わずと叫んだ。

「……見えないよ」
不満そうな声が田中くんのシルエットから聞こえた。

「み、見えなくていいの。そのままベッドから出ないで。わたし、着替えて出て行くから」
咲はテレビの横に置いてあった着替え一式を抱えると、後退りでバスルームに入った。猛スピードで着替える。

バスルームを出ると、響は言う通りに照明をつけていなかった。ベッドの上にあぐらをかいて座っているように見える。細い太陽のラインが響の前髪にメッシュを入れていた。

そして、こちらを見ている。
あの瞳で。

「帰ります。じゃあ、会社で、またっ」
咲はドアを勢い良く開くと、一目散に廊下を走って逃げだした。
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