不思議な眼鏡くん
いつも宿泊先は変わらない。
吹き抜けのエントランスには、豪奢な生花が中央に飾られていて、全体的に金ぴかだ。本当に大きな旅館で、宴会場も広い。社員旅行にはもってこいの旅館だ。

けれど、旅館と言ってもリーズナブルな部屋は洋室なので、部屋は二人ずつの使用。咲はちづと一緒の部屋だ。

ツインの部屋。シンプルだけれど清潔で心地いい。

荷物を置いて一息つくと、咲はすでにベッドに転がっているちづに話しかけた。

「これから、夜の宴会まで何するの? 温泉いく?」
「わたし、田中くんとちょっと出てこようと思って」

ちづはそう言って、ベッドの上に座り直した。乱れた髪を整えて耳にかける。ショートボブ。活発で愛らしい。

「……そっか、じゃあ、わたしは温泉いってこようかな」
咲は気にしていないフリを装う。けれど、本当は頭の中が「なんで二人で?」という疑問でいっぱいいっぱいだ。

いつのまにか、仲がよくなってる。そうか、年齢も近いし、当然だよね。
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