Spider
もう彼とは半年の付き合いなのに、初めて眼鏡をかけてるんだって気がついた。
それほどまでに、彼にはいままで注意を払ったことはなかったのだ。

「もしかして、もう予定がある、とか」

「あ、……いえ。でも」

「だったら私と、花火大会に行きませんか?」

彼の顔が迫ってくる。

……整った顔立ち、黒縁の眼鏡。
意外とイケメン?
そして……かなり強引。

「あ、えと……はい」

……彼の強引さに押し切られ。
ついつい頷いてしまった。

 
連絡先を交換すると、楽しみにしています、と云いつつも、いつも通りの事務的な顔で彼は帰っていった。
呆然とそれを見送り、我に返る。

……あれ?
私いま、もしかして、デートの約束をしたということでしょうか?

携帯を確認すると、確かに新しい連絡先が増えている。
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