一匹少女が落ちるまで
「雨宮」
彼女の名前が呼ばれたとき、俺は彼女の席に目を向ける。
「はい」
そう静かに返事をした彼女の黒い長い髪が、隣の窓から入る風で少しなびく。
ああそうか。
これが『魅力』か。
可愛いわけでも綺麗なわけでもない。
それは紫月だけが持っているもので。
何を言われても動じない冷静な口調とか。
誰の目も気にせずに素直に生きてる姿勢とか。
彼女のそういうところは、俺にはないものだから。
俺は紫月のことが『気になっている』んだ。