島…君をレンタルしたいカナ
まだ勤めてることに納得してない感じ。
このままズルズルと勤め続けてたら、仕事探す気あるのかと疑われてしまいそうだ。


「カナちゃん、あのさ…」


一歩近寄る彼にドキッとして目を見つめた。
黒縁メガネのレンズの奥にある黒目が、じっと見返してきたけどーーー


「…まぁいいや」


言うのを諦めた?
何だったの…と、また一つ消化不良な思いが膨らむ。



「………なるよ」


家まで送っていこうと言った後で、島さんは背中を向けて囁いた。


「えっ?何?」


聞き直そうとしたところで、彼がくるっと振り返った。


「いつまでも本屋勤めしてたら俺も狂犬になるよ?だから、さっさと仕事変わって」


「島さんって…」


もしかして、結構独占欲強い!?
それに、もしかしたら嫉妬深い?!


「笑うな」


「うん…」


必死で我慢してるじゃん。


「笑うなって……カナ」


ドキン!と胸が弾んで口を噤んだ。

目蓋をバタつかせてたら、彼の顔が何処か照れてる。


「今……」


カナって呼び捨てたよね。


「何?名前呼んだら駄目だった?」


ふるふる…と首を横に振って「ううん」と言う。
これまで父と母と元カレのマコト君だけが呼び捨ててきた名前。

ずっと島さんに呼ばれたかった。
彼の印象的なハスキーボイスで「カナ」って優しくーーー。


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