島…君をレンタルしたいカナ
「だったら、思い通りにならないからって、へそを曲げるのはいい加減にしてよね。そんな心の狭い態度取ってたら、カナさんに捨てられちゃうよ?」


ねぇ?と私に目を向けたカンナさんは同意を求めてくる。
私はそんなことよりも彼の傷が気掛かりで……。


「え…あ、うん…」


曖昧に返事をして彼の方を向いた。
島さんは苦い顔をしていて、「いいからあっちへ行けよ」と手を振る。


カンナさんは肩を竦め、ごゆっくりと囁いて逃げた。
私は彼女に会釈をして、背中を見送ってから彼を振り返った。




「……ガーゼ、取れたんだね…」


もっとよく見せて欲しい。
近付いたら怒られるかな。


横を向いてる彼は、小さな声で渋々「ああ…」と返事。


「昨日病院へ行って、保護はもう要らないでしょうと言われたんだ」


「手は?」


「包帯は取れたよ。でも、傷がまだくっ付いてないからガーゼはしてる」


「見せて!顔!」


居ても立っても居られず、彼の側に寄って行った。
私の方に振り向く彼の傷痕を間近に見て、ぎゅっと胸が苦しくなる。



「……痛そう」


手を伸ばして触りたい。
この傷痕、残るんだろうか。


「痛くないよ。ちっとも」


私を心配させまいとしてるんだろう。
だけど、口角を上げると頬の傷のせいで顔が引きつって見える。



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