島…君をレンタルしたいカナ
「チョロが動かないと思った時は焦りました。名前を呼んでも耳も動かさないし。いけないとは思ったけど、ケージの中に手を突っ込んで揺すってもダメで。
父が亡くなった日のことが頭に浮かんできて、もの凄く怖くてパニクりました」


今でこそ冬眠だったと分かり、笑って話せる。
だけど、あの時はホントに半泣き状態でーー


「私の前でまた命が尽きるのかと思ったら怖かった。たった一人で見送るのは父の時だけでいいと思いました」


「お父さんが亡くなるのを君が看取ったの?」


たった一人で?と不思議がる彼に、母と賢太はコンビニに行ってたんだ…と教えた。



「そうか…辛かったね…」


紙をケージから掻き出す私の側に来て、彼はポン…と頭に掌を置いた。
慰めのつもりだと分かってる。
だけど、その手はスゴくあったかくて、私の頭の上から伝わる彼の体温が、身体中をほっこりとさせてくれる。


ポトン、ポトン…と床材の紙の上に落ちていく涙。
それを悟られないようにと思いながら、ガサガサと紙音を立てた。



「あ…」


何を思ったのか声を上げた彼を振り返った。
涙を浮かべたままの私を見て、ハッとしたように目を見開いた。


「思い出した!君、あの時の子!?」


あの時…というのがあの日のことだと直ぐに思わず、少しだけ首を傾ける。


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