そのとき、君の隣で笑うのは
第1話 気づいてしまった気持ち-side Shiumi
少し黒ずんだ、足に馴染む上履き。
昨年より一階多く登る階段。
まだ慣れない足取りに、今までと同じ造りの廊下と教室。
見馴れた外の景色に、以前より見下ろすグラウンドと遠くまで広がる街並み。
知っているような知らないような顔触れに、飛び交う会話。
いい加減見馴れたものなのに、新鮮に感じる空気と景色。
校庭には、満開に咲き誇る桜の木。


また、この季節が始まった。


黒板に書かれた座席を確認して席に着く。
ひんやりした椅子に少し緊張して、馴染みの人を探そうと辺りを見渡す。

「紫海ー!良かった!今年も同じクラスだよー!」

その声を背中で聞きながら、中学からの腐れ縁、九十九鳴子(つくもなるこ)がのしかかってきた。
彼女のストレートショートの黒髪から、シャンプーの香りが漂う。

「鳴子ー!わたしも高校最後のクラスに鳴子居て良かったよぉー!!!朝てるてる坊主にお願いした甲斐あった!」

大袈裟に言いながら、伸ばされた鳴子の腕に絡みつく。

「まーたお前と一緒かよ。まったく、最後の最後までとんだ腐れ縁だな」

そう言いながら斜め後ろの席に着いた天竺葵(てんじくあおい)も、中学からの仲。
・・・・・・もとい元カレ。
彼の茶色のパーマヘアーはくせっ毛のくせに、高校に入ってからオシャレに見えるから気に入らない。

「うわっ、また葵と同じクラスなの?中1から高3まで一緒って怖いんだけど」
「運命感じちゃうね!」
「大学も一緒だったら結婚しようね!」
「それはムリ!!!」
「わたしも!!!」

「・・・あんた達、また付き合えばいいのに」

「「それはないわー」」

葵とは男女の仲関係なく、気兼ねなく冗談を言い合えるくらいの親友になった。
この関係がお互い心地良くて合っている。

「というかオレ、カノジョいるし」
「まじでホント、葵に居てわたしがフリーって納得いかない!」
「オレモテるからねぇ」
「言い返せないのが悔しい!わたしもカレシ欲しい!高校最後なのに!カレシ欲しい!!青春したい!」
「その前に受験でしょ」

鳴子に諭され、ぐうの音も出なくなる。
高3はこれだからイヤだ。

「でもほら!カレシいたら勉強頑張れるかもしれないし!一緒に大学目指すとか!青春だよね!」
「なら、カレシにしたい人見つけなよ」
「そこなんだよねぇ」

正論を突きつけられ、現実に返る。
鳴子の声色で、呆れた顔をしているのは見えなくても分かる。
そして徐々に背中にかけられる体重。
そろそろ重くなってきた。

「例のてるてる坊主にお願いしたら笑」

小馬鹿にした笑顔でこちらを見てくる葵。

「てるてる坊主バカにしたらバチ当たるからね!」
「え?あれって神かなんかだっけ?笑」
「あー、昔からやってるよね、紫海。
てるてる坊主に願掛けして窓に吊るすやつ」
「結構叶うんだから!部活の選抜メンバーも毎回それで入選!」

てるてる坊主の偉大さを語ったら葵は興味なさそうに教室の時計を見ていた。

「おまえら席につけー」

ダルそうな声と合わせて名簿で肩を叩きながらのっそりと担任が入ってきたので、鳴子が勢いよく離れる。
みんなが言われた通りに席に着き始めた。
自分の軽くなった身体を教卓に向ける。
名前の確認と称して、フルネームで生徒を呼び始める担任。

「なかさとしうみ・・・中里紫海!」

「はい!」

自分の名前を呼ばれ、緊張して強張った身体とともに、茶色くしたストレートのポニーテールが揺れた。


今日から新学期が始まった。
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