江戸女と未来からの訪問者
 ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。

 こんな朝早くから誰であろう。まだ七時前ではないか。

 私の食事を邪魔する輩は許さぬ。

 

 またこやつか。懲りない輩め。何度言えば、お主はわかるというのだ。

「また囲炉裏を使ってるんじゃないだろうね。木之下さんの上の階の住人から、毎日苦情が来てるんだよ」

 ろくに挨拶もせず、朝からべらべらと。なんと無礼なことか。

「いや……その……」

 私は慌てて茶を濁す。

「煙が見えるよ。いい加減にやめてよ。火事になったらどうするの」

 ちゃんと火の後始末はしておる。お主が心配することではない。

「だ、大丈夫ですので」

「本当に大丈夫なの? また苦情が来たら、立ち退いてもらうよ」

 たかがマンションの管理人のくせに、偉そうなことを言うでない。

「あ、はい。本当に気を付けますので」

「じゃあ、今日はこのくらいにしておくよ」

 ふっ、逃げ足の早い奴め。

 敵に背中を見せるとは。

 いつか返り討ちにしてやるぞ。

 首を洗って待っておれ。



 鉄鍋が大変なことになっておる。

 せっかくの雑炊が。あの輩のせいで。

 鉄鍋様、本当にかたじけのうござる。どうか機嫌を直してくだされ。
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