嘘つきな婚約者


良さんは、堅物までとはいかないが、女性と上手く適当に付き合える性格ではなさそうだ。

だから、父親である木崎社長が心配して、私に白羽の矢を当てたにちがいない。

「ほら、お前からも、恵都さんに頼みなさい。


と木崎社長は、良さんを促している。


彼自身も、突然の父親の申し出にどう言えばいいか、試案気味だ。


「では、お友だちとして……」

とやっと口を開くことができたようだ。

私の方も父が、

「恵都はどうなんだ。」

「私も、お友だちなら……」

と答えた。

父親同士は、それでも満足した様子だった。

それから、良さんと私は、仕事を通しながらも、たまに食事にいく関係になっていった。
< 8 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop