イケメンなんか大嫌い

アプリを開き、通話ボタンを押すかどうか、しばし指先を彷徨わせた。
すると念が届いたのか、着信の知らせが画面に浮かび上がり、目を見張った。

思わず勢い良く上体を起こし、電話を取る。

「もしもし」
『早っ』

躊躇いなく電話に出てしまい、相手の反応に頬が熱を帯びる。

「……たまたま画面を見てたの」
『素直に言えば~? 待ってたって』

「……動きがないなぁとは、思ってたよ」
『動きって』

電話口の人の微かな笑い声が響いて、馬鹿にされたのだとしても胸が高鳴ってしまった。

『今、何してたの?』
「……お風呂入れてた」

『もう? 飯は食ったの?』
「……うん。……俊弥は……」

当たり障りない質問を口にするだけのことに、心音が速度を付ける。

「……何食べたの?」
『俺? 今日は、ラーメン』

「……男子ってラーメン好きだね……」

他愛ない会話が心地好くて、思いがけず胸元で手を握っていた。
乙女かと、自分に突っ込みを入れたくなる。

『なぁ』
「うん」

『どっか行こっか』
「……うん……行く」

カップルにとっては至極当然のそんな会話ひとつ取っても、むず痒くて舞い上がりそうな程。

『日曜にしよ』

土曜日じゃなくて?
瞬間、胸を掠めた疑問は、口には出せなかった。

「……わかった」

まぁ、何か予定があるんだろうな。
若干残念がっている自分が、何を期待していたかは、自覚している。

『どこ行く?』
「……俊弥の行きたいところ」

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