イケメンなんか大嫌い

……俊弥の誕生日……!

『来週とか再来週は俊弥くんと過ごすだろうと思って』

不意に先日のお母さんの台詞が蘇った。
もしかしてあの言葉の意味って……その間に俊弥の誕生日があるから……?
お母さんの方が気付いてたんじゃ……余りの愚かさに口元を手で覆い、絶句した。

どうして気が付かなかったの

愛唯ちゃんと作ったのは、クリスマスケーキじゃなくて、俊弥の誕生日ケーキ。
当時の光景が脳内を回り一気に全てを思い出し、自分の馬鹿さ加減に身震いしそうな程だったが、こうしちゃいられない。
慌てて時計を振り返ると、21時を回っている。

何の用意もないけど、悩んでいる場合じゃない。
それは重要じゃない。


弾かれるように、俊弥に電話を掛けていた。

しかしコール音が繰り返されるばかりで、一向に出ない。
電話番号に掛けようと画面にアドレス帳を開き、そこで気付いた。

番号を知らない。アプリのIDしか──

青ざめながら、直接訪ねようと立ち上がり、何処へ向かおうとしたのかと足が止まる。
部屋も知らない。

いざという時に、俊弥についてほとんど何にも把握していない事実に直面し、愕然とした。

「……嘘でしょ……」

今頃になってようやく行動に移しても、遅過ぎたのか―
床に手を付き、拳を握る手元へ頭を俯けて、強く瞼を瞑った。
何か手掛かりはないかと頭を回転させていると、同窓会での会話が思い起こされた。

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