イケメンなんか大嫌い

『本当は未麻ちゃんの気持ち気付いてたんだけど。でも、言わないと伝わらないんだよね』

『それ、本当に恋愛なの? あの人にならきついこと言われないし、お前がして欲しい風に優しくしてくれるだけだろ』

『……まぁ、根は悪い奴じゃねぇの香坂もわかってるだろ?』

目を閉じたまま、皆の印象的な言動を思い返すと、それぞれの表情と共に瞼の裏にちら付いた。

皆が感じ取った空気は
わたしの俊弥への好意なのか
俊弥のわたしへの好意なのか

「…………」

瞼を開くと、昨夜無意識的にテーブルの上に放ったネックレスの細い鎖の、微かな輝きが目に入った。

昔の話は、もう気にしてないんだけど、うん。
今……本当に俊弥はわたしを好きなのだろうか……。
あんだけきっつい一言お見舞しといて好きとか……なくない?
奴の言動を脳内で再生すればする程、甚だ疑問だった。

そもそもあいつはわたしが嫌いで、わたしもあいつを嫌いだったはず……。
好きって……いつから? どの瞬間から?


腕を天井へと上げ、伸びをする。
前方へ目を向けると、唐突に部屋の汚さが気になった。

普段は目にも止まらない、棚から溢れそうな雑誌や、無造作に化粧品の押し込まれた籠が、何かを訴え掛けて来るような感覚に襲われる。

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