レンタル彼氏–恋策–
6 切なさと本音

 さっきまでいい天気だったのに、今、窓の外には曇天模様が広がっていて、ますます気持ちが暗くなった。

 心晴(こはる)がいなくなるなんて、考えたくない。何かの間違いであってほしかった。

「引っ越すって、そんな遠くに?」

「隣の県だよ。でも、車で2時間半はかかるから、今みたいにしょっちゅうひなたと会えなくなる……」

 心晴は、しぶしぶそれを受け入れたみたいな口調で事情を話した。

「中途採用だけど、お母さん正社員の仕事見つけたんだ。支社勤務ならここに居られるけど、入社後すぐ本社で働いてほしいって面接の時に言われてたみたい……」

「それで引っ越しを?」

「急だよね、こんなの……」

 心晴のお母さんは、お父さんが亡くなってからずっと、パートタイムの仕事を掛け持ちして家計を支えてきた。正社員より時間の融通が利くからという理由でそのスタイルを貫いていたけど、経済面を考えると正社員勤めの方が何かと安定しているので、以前から正社員の仕事も探していたらしい。

 心晴がワゴンのバイトを頑張っているのも、そういう時給が高いバイトなら親に負担をかけずにすむから。そのことを考えると、心晴のお母さんが新しい仕事を見つけたことは、心晴の家にとっていいことのはずだ。

「でも、心晴は納得いかないって感じだね」

「そうだね。あたし、こういう時が来たら絶対お母さんの応援してあげようって思ってた。でも、まさかこんな早くそんな日が来るなんて……。こういうこと覚悟してたつもりなのに、いざこうなると、なんて言うか」
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