愛され系男子のあざとい誘惑

「わたし、藤澤社長のファンなんですよー。ずっと会いたくて、このビルに通ってたんです」

「そうなんだ。ありがとう」

「いえいえ、全然ですぅ」

「じゃあ、俺たちそろそろ行くからゆっくり食事、楽しんで」

「行こうか」と言われ、戸惑いつつもカバンを持ち、立ち上がると女性は同じように立ち上がった藤澤さんの腕に自分の腕を絡みつけた。


「あの、連絡先教えてもらえませんか」



藤澤さんと別れた後もずっとさっきの彼の表情が頭から離れることはなかった。「ごめんね、携帯忘れちゃったんだ」と断り方はいつもの優しい彼の言い方だったけれど、目は軽蔑の眼差しだった。


あの後も「楽しかった。また明日ね」と何も言わなかったけれど、きっと彼は連絡先を聞かれるのは嫌なんだ。



だったら、私ももう聞けない。