愛され系男子のあざとい誘惑
でも今日は体調不良のせいで思うように仕事が捗らない。時計の針はもう七時五十分を指しているというのにまだ半分以上の部屋の掃除ができていないのに。


どうしよう。このままじゃ最初の人が出勤してきてしまう。それなのにこともあろうか立ちくらみで後ろに倒れかけた。

「・・・大丈夫?」


そんなとき、倒れると思った私の肩を抱き留め声を掛けてくれた人がいた。やばい。ここの社員さんかもしれない。


「す、すみません。大丈夫です。ありがとうございます」

体制を建て直し慌てて後ろを振り返ると、そこに立っていたのはとても綺麗な顔をした男性。


女である私が嫉妬するくらいのパッチリとした大きな二重の目。スーッと通った鼻筋。少しウェーブがかかったダークブラウンの髪。今まで私が見たどの男性よりも素敵だった。


「顔色悪いよ。少し、休んだほうがいい」


「いえ、大丈夫です。まだ仕事も残ってますから」


「仕事って掃除でしょ?もうこれだけ綺麗にしてくれたんだから充分。だから少し休んだほうがいい。ここ座って。何か飲み物持ってくるから」


大丈夫だという私をそう言って椅子に座らせてくれた男性は、会社の中にある冷蔵庫の中からミネラルウォーターを手にして戻ってきた。そしてそれを私に手渡してくれた。


「いいです」とそれも断ったけれど、正直のども渇いていたこともあって、ありがたく飲ませてもらうことにした。
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