愛され系男子のあざとい誘惑
「いいのいいの。面白いものが見られたし、ヒロが払ってくれたからね」

「で、でも・・・」

「それより聞きたいことがあるの。あなたはヒロの彼女?」

「い、いえ。違います。私の片想いです」

「・・・そう」

何を言われるのだろうとビクビクしながら答えると素っ気ない返事をされてしまった。片想いのくせにあんな啖呵を切って迷惑を掛けて何様と思われたのかもしれない。


恐る恐る目の前の彼のお姉さんを見ると遠い目をしながらアイスコーヒーに口をつけていた。やっぱりその姿はオーラがあった。


上下のジャージ姿にメガネを掛けていてもあのバーの総支配人というだけあって品があるし、本当に綺麗。


「優美さんだったわね?ヒロは連絡はマメじゃないし、メールやラインは返さない。自分の都合のいいときに連絡してホテルに呼び出す自己中心的な付き合いしかしないけれどいい?」


お姉さんは嘘を言っているようには見えなかった。きっとそういう人を何人も見てきている。だからこそ、あなたも例外にはなれないと言うことなんだろう。


藤澤社長に限ってそんなことないです!なんて言えるほど私は社長のことを知っているわけではない。むしろ、私よりお姉さんのほうが社長のことをよく知っている。


だとすると私は否定も肯定もできなかった。
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