スパダリ副社長の溺愛がとまりません!
しばらくして副社長が戻ってくると、今度こそ社長に挨拶をして、私たちは車に乗った。

「広瀬さん、今日は本当にありがとう。急なことでも対応してくれて」

私の会社へ向かいながら、橘副社長はそう言った。清々しい表情の彼を見て、来てよかったと思う。

「いいえ。私もいい勉強になりました。本当にありがとうございました」

社長の話や今日の姿を見ていて、少なくとも私が抱いていた副社長の印象は間違っていたように思える。

大企業グループの御曹司というから、どれくらい世界の違う人かとも思っていたけれど、肩書きを知らなければ、ごく普通の男性の印象だ。

もちろん、ルックスのレベルはかなり高いけど……。

「広瀬さん、インテリアコーディネートをよろしく頼むよ。店の雰囲気の大部分は、きみが作ると言っても過言じゃないし」

「は、はい。もちろんです。全力で、頑張ります!」

さっきの社長の話に触発されたのか、期待を込められた言葉に奮起したのか、自分でもよく分からない。

だけど、かなり力強く返事をしてしまい、副社長にクスクス笑われた。

「半分は冗談だよ。広瀬さんひとりに、責任を負わせるつもりはない。だけど、本当に面白いな」

「私が……ですか?」

笑われたことと、面白いと言われたことに、気恥ずかしさを感じる。

「ああ。ひたむきに仕事を頑張るというか、俺の周りには、いそうでいないタイプだ」
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