君の声が、僕を呼ぶまで
「陽太先輩と、別れようと思うの」

それを聞いた桜子は、ビクンと肩を揺らした。


そもそも、付き合ってるって、ちゃんと話した事すらなかったけど…。

それすら、私は逃げ続けていたんだから。


「こないだの小春ちゃんの事で智秋がね…」

桜子は、黙って聞いてくれた。

時々、何か言いたげだった。

智秋が、と言い続けているのが言い訳がましいって、気付いたのかもしれない。

桜子は、とってもしっかりしてて、人の気持ちに敏感だから。


「でも、だからって、冬島先輩と別れるのは…」

何でそんな、桜子が悲しげな顔をするの?

違う、何でそんな切なそうな顔をするの?


…どうして、人は人を想う時、誰もが、そんなふうに切なさと愛しさを混ぜ合わせた目をするんだろう。
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