君の声が、僕を呼ぶまで
当たり前だけど、私と同じ、人間の血が流れ出ている。

あの時、傷付けてごめんね。


雪人先生が、いつか彼にハンカチのお礼と、傷付けちゃってごめんねを言えたらいいねって言ってた。

でも、こんな私の、あんなやらかした行動が、彼の心に少しの暖かさを与えられていたなんて。

クタクタになるまで、絆創膏を大事にしてくれていたなんて。


…あの時、傷付けてごめんね。

…そしてお礼を、このお礼も、彼に伝えたい。


彼の手を、何度も何度も撫でる。

「…ぁ、あのっ」

困ったように言う彼は、顔を真っ赤にしている。


その言葉で我に返る。

…私、私、私…っ

恥ずかしさなのか、思い出したように襲ってきた恐怖なのか、今度こそ、彼の横を抜けて教室から出て、廊下を走る。
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