君の声が、僕を呼ぶまで
ぼんやりと見つめていた僕は、不用意に教室のドアに触れてしまって、静かな世界に似つかわしくない雑音を落としてしまった。

僕に気付いた彼女は、酷く驚いていた。


しまった…!

「…あっ、ご、ごめんっ…! すぐ…あっち、行く、からっ」

慌ててユーターンしたけれど、見事に転んだ。


擦りむいた手の平から血が出てる…けど、そんなのは後から消毒すればいいだけで。

「ごめん、ほんと、すぐあっち行くからっ」

と体を起こした…そして、また転んだ。



どうして僕はこうなのかな。

頑張ろうと思って、いざとなると頑張る方向が分からなくて、空回ってこのざまだ。

小春を怖がらせたくない、その想いだけは変わらずにあるのに。


ギュッと瞑った目の奥に、また微かな灯りを感じて、目を開ける。

目の前には、カラフルな黒ネコ柄の絆創膏。

小春が、僕に差し出している。

「え…」


その手は震え、視線も逸らしているけれど、確かに僕に差し出している。

僕の頭の中で、いくつもの場面が巡り、たくさんの想いが巡る。

この感情を、どうやって表現すればいい?
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