君の声が、僕を呼ぶまで
「そう、かな」

「そう思わないの?」


「…思える」

僕は、僕の過去に沈んだ世界から、一歩踏み出せたと思う。

小春も、自分の世界の境界線を、少し広げたような気がした。


それは、紛れもなく、世界が動き出した瞬間。

僕の声が、存在が、ようやく君の視界の中に近付けた気がする。


僕が少しの安堵と自信を噛みしめていると、桜子が優しい声で言った。

「…小春の…【サラ】の秘密、教えてあげる」

「【サラ】の秘密?」


「【サラ】には、【アキ】と【サクラ】と同じくらい前から傍にいる、一番の味方がいるんだよ」

「一番の味方…?」

複雑な声を出した僕を、桜子が少しだけ、意地悪な顔で見た気がした。


「うん、きっと智秋の味方もしてくれると思う」

次は、ふふっと笑って言った。
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